マーケティングにおけるビッグデータ入門

ビッグデータ分析の始め方

「ビッグデータ分析がなければ、企業はまるで高速道路に飛び出すシカのように、目も見えず耳も聞こえない状態でWeb上をさ迷い歩くようなものです。」

作家のジェフリー・ムーア氏が2012年にこのようにツイートしたときには、おそらく言い過ぎであると受け取られたことでしょう。 今やビッグデータは、多くの業界で広く受け入れられており、とりわけマーケティングやセールスの領域で顕著にその傾向がみられます。 ムーア氏のツイートではビッグデータの分析について言及されていますが、同様のことがデータ取得やデータ統合、データの保存など、ビッグデータのあらゆる領域に当てはまります。

顧客ロイヤルティやエンゲージメントの向上、活動の最適化、あるいは価格決定のいずれに取り組む場合でも、マーケティングにおけるビッグデータが不可欠なツールであることは証明されています。

しかし、ビッグデータはどのようにマーケティングやセールスを変革をもたらしているのでしょうか。 ビッグデータをマーケティングやセールスに活かそうとする際、そこには間違いなく課題が伴います。 私たちはクラウド技術を活用して、収集したビッグデータのキュレーション、フィルタリング、処理、そして分析を行う必要があります。 幸いなことに、こうした課題に立ち向かうための革新的なソリューションがあります。

ビッグデータはどのようにマーケティングやセールスを変革しているか

マーケティングにおけるビッグデータは、次のような業務の改善を目的として、膨大な量のデジタル情報を収集、分析、利用することで構成されています。

  • 360°の顧客ビューを獲得します。「Know Your Customer」(KYC:顧客確認)の概念は何年も前に、銀行詐欺を防止するために考案されました。 KYCによって、かつては大手金融機関しか入手できなかった顧客の行動に関する知見を得ることができます。 今日、ビッグデータにアクセス可能になったことで、クラウドコンピューティングとビッグデータの恩恵によって中小企業でもKYCの利点を享受できるようになりました。
  • マーケティング活動では、顧客エンゲージメント、とりわけ顧客が自社のブランドにどのような印象を抱き、どう接しているかが重要な要素となります。ビッグデータ分析によって、既存製品の改良や顧客当たりの売上高の向上などのプラスの変化をもたらすために必要となる、ビジネスインテリジェンスが得られます。
  • ブランド認知度は、ビッグデータによってマーケティングに大きな影響を与えることを可能にする別の方法です。Aberdeen Groupのデータ駆動型小売業者の調査によって、「データ駆動型の小売業者は、ブランド認知度の年間上昇率がそうでない他の業者の2.7倍である(20.1%対7.4%)」ことが明らかとなりました。
  • ビッグデータによって得られる360°の顧客ビューにより、マーケティング担当者が顧客ごとに専用のコンテンツを準備して、最も効果的なタイミングと場所で提案することが可能となり、オンラインと店舗双方でのブランド認知度と想起率が向上します。 ビッグデータを分析・活用することにより、ジョンソン・エンド・ジョンソンのようなマーケティング予算がなくても、自社の製品カテゴリ内での「バンドエイド」の地位を確立できるようになります。
  • 顧客獲得の増加も、ビッグデータがマーケティングにもたらすもう1つの大きな利点です。 McKinseyの調査の結果、「顧客分析を徹底して行うユーザーは、新規顧客獲得において競合他社を明確に上回る成果を上げる可能性が23倍高い」ことが明らかとなりました。 クラウドの活用により、Webやモバイルアプリケーション、メール、ライブチャット、さらには実店舗でのやり取りも含めた複数のソースから、整合性のある個別化されたデータを収集して分析することが可能となります。
  • ビッグデータを使用することで、マーケティング担当者はクラウドコンピューティング環境でリアルタイムデータを分析・活用できるようになります。ビッグデータは、リアルタイムなデータを素早く正確に取得、処理して分析することで、効果的なアクションを即座に取れるようにします。他のどんな技術でも、この機能を代替することはできません。 この機能は、GPSやIoTセンサー、ウェブページのクリック、あるいは他のリアルタイムデータを分析する際に欠かせません。
  • ビッグデータ分析は、ビッグデータの本質的な要素です。 ビッグデータ分析によって得られるビジネスインテリジェンスによってマーケティング活動が最適化され、時間とコストを削減できます

マーケティング担当者のための3種類のビッグデータ

マーケティング担当者は3種類のビッグデータに関心を持っています。顧客データ、財務データ、業務データです。 それぞれの種類のデータは通常、異なるソースから取得され、異なる場所に保存されます。

  1. 顧客データは、マーケティング担当者がターゲットとなる顧客を理解するのに役立ちます。 名前やメールアドレス、購入履歴、Web検索などの事実は、言うまでもなくこの種類のビッグデータです。 それに劣らず、ソーシャルメディア活動やアンケート、オンラインコミュニティから得られる可能性のある、顧客の行動を示す情報も同じくらい重要です。
  2. 財務データは、パフォーマンスの測定と効率的な事業運営に役立つ データです。 組織のセールスやマーケティングの統計データ、コスト、マージンはこのカテゴリに分類されます。 競合企業の財務データ、たとえば価格情報なども、このカテゴリに含めることができます。
  3. 業務データは、業務プロセスに関連する データです。 出荷や物流、顧客関係管理システム、ハードウェアセンサーや他のソースからのフィードバックに関連するデータかもしれません。 このデータを分析することで、パフォーマンスの向上とコスト削減につなげることができます。

マーケティングにおけるビッグデータの実例

ビッグデータの可能性を示すマーケティングのユースケースは刺激的ですが、現実の世界でのマーケティングにおけるビッグデータはどうなっているでしょうか。 企業がどのようにビッグデータを活用してマーケティングを成功に導いたのか、3つの事例を紹介します。

Elsevierはビッグデータを利用して、マーケティング日程を最適化しました

Elsevierは、科学、技術、医療情報を提供する世界最大手の出版社で、年間430,000件の査読付き研究論文を発行しています。

ビッグデータとマルチクラウド環境によって、ジャーナルや書籍をそのライフサイクル全体を通じてしっかりと効率的に追跡できると同時に、リソースを効果的にスケジューリングすることで製作を合理化し、マーケティングをサポートできるようになりました。 これらの論文は、さまざまな供給元から、同社のグローバルな組織全体に提供されます。 世界中にある複数のクラウドやソースからのビッグデータを組み合わせることで、多くの地域でのマーケティング活動を1つのグローバルマーケティングメッセージ戦略へと統合しています。

DMD Marketing Corp.は、ビッグデータにより競合企業の3倍の競争力を実現しました

DMD Marketing Corp.は、600万人を超える完全にオプトイン済みの米国医療従事者の動的なデジタル行動にリーチし、報告して対応することを可能にする、唯一の認証済みデータベースを提供しています。 現在までに、DMDでは3億通以上のメール配信や3万件以上のメールによる マーケティング活動を実施しています。

医療従事者を対象としたメールによるマーケティングは、非常に競争の激しいコモディティ化した事業であることを考えると、ビッグデータはDMDに差別化の方法をもたらしていると言えます。 クラウドベースのビッグデータ統合ツールを利用することで、DMDはメールのデータを3日ごとでなく毎日更新できるようになり、95%のメール到達率によって競合企業を上回ることが可能になりました。

マーケティングにおけるビッグデータの課題

360 度の顧客ビューを活用することで、組織はマーケティング戦略を開発し、顧客をより深く理解できるようになります。 これはビッグデータがもたらす利点の1つではありますが、一方でこのようなマーケティングを適切に行うのが最も難しい課題の1つでもあります。

88%のITリーダーは、自分たちが顧客のことを十分に理解していると信じていますが、企業が自分たちのニーズを理解していると感じている顧客は、わずか61%です。 両者の認識のズレに対処しなければならないのは明らかです。

1. 異なる種類のデータシステム

認識のズレの原因の1つとして考えられるのは、さまざまなソースからのデータの取得にかかる時間です。 ユーザーの認識は即座に行われるので、データ取得のタイムラグが大きくなると、ズレも大きくなります。 この時間のズレは、顧客に合わせたカスタマイズの有効性を低下させるため、特にマーケティング担当者にとって困難な課題となります。

企業は多くの場合、データを保存して処理するシステムを複数組み合わせて使用しています。 こうした異種のシステムから、時に複数のチャネルを通じてデータを収集する場合、データ分析の遅延やセキュリティとコンプライアンスの損害、効率の低下が容易に起こるという困難な課題に直面します。

この問題に対処する方法の1つは、顧客マスターデータ管理を使用することです。 顧客MDMは、すべての顧客データを1つのゴールデンレコードに連結して360°の顧客ビューを提供し、その情報を必要なタイミングで必要な場所に共有するための方法です。 この機能により、データ取得までの時間が大幅に短縮されます。

2. ストリーミングのデータソースを取得

ストリーミングデータの場合には、データの取得はさらに困難になります。 IoTシステムには数百ものセンサーが存在する場合があるので、ストリーミングデータの量は、たとえビッグデータシステム上であっても非常に厳しいものになります。 データの取得に加えて、データを利用するためのリアルタイムのイベント処理も必要になります。 マーケティング担当者が、IoTデバイスを介したターゲット顧客へのリーチの可能性にますます投資するにつれて、流入するストリーミングデータを効果的に処理するためのクラウドネイティブのビッグデータツールが必要となっています。

GPSやWebサイトのクリック、ビデオ視聴者との対話などの一部のストリーミングデータは、極めて重要なマーケティングデータをもたらす顧客の行動に直結します。 こうした課題は、AWSやAzure、Google Cloudなどの現在主要なクラウドプラットフォームで入手可能なツールを利用することで対処でき、マーケティング担当者はビッグデータのクラウドプラットフォームがもたらす、ストリーミングデータの利点を最大限に享受できるようになります。

3. 部門間の協力

ビッグデータによるマーケティングの変革を成功させる3つの要素は、人、プロセス、テクノロジーです。 マーケティングにおけるビッグデータに伴う課題は、テクノロジーだけではありません。 ビッグデータの採用には、社内のさまざまなチームの関与が必要です。 しかし、それぞれのチームは独自のビューを必要としていて、独自の方法でデータを利用します。

マーケティング担当者がビッグデータの恩恵を受けられるのは、そのビッグデータの分析にアクセスでき、かつ分析が効率的な場合のみです。 それを実現するのは、ビッグデータとマルチクラウド環境です。 IT部門と他のデータ管理部門が自らの環境で独自のツールを使用できるようになるのと同時に、その他の部門が非常に重要な情報にアクセスできるようになります。

このことは、ITチームとビジネスチームを比較すれば明らかです。 ITチームは、多彩なユーザーインターフェイスを備えた複雑なツールを必要とします。 ビジネスチームには、重要な点にフォーカスした、シンプルでありながら強力なツールが必要です。 両方のチームが使えるような妥協案はありません。 それぞれのチームが効果的に作業するには、別々のツールを実行する必要があります。

異なるチームのニーズを満たすことのできる単一のツールがなければ、複数のツールに互いに通信させる必要があります。これはコラボレーション型データ管理(CDM)として知られています。 CDMシステムを利用すると、異なるチームがデータを共有し、データを操作して転送できるようになります。それぞれの作業は、各チームのニーズに適したインターフェイスを使用して行われます。 そのため、データクオリティを維持しながら、各チームが必要なツールを利用できます。

クラウドはどのようにマーケティングに対してビッグデータを推進しているか

どんな業界でも、クラウドコンピューティングなしで実用的なビッグデータを導入することなど考えられません。 ビッグデータが要求する計算能力とデータストレージは、クラウドコンピューティングの特性であるオンデマンド、セルフサービス、プールされたリソース、そして弾力性なしではビッグデータの導入達成が困難です。 こうした基本的な特性だけでなく、クラウドコンピューティングで起こる革新はビッグデータを使用するマーケティングイニシアチブに利点をもたらし続けています。

ビッグデータと同様に、クラウドコンピューティングも仮想マシンやコンテナの使用を促進します。 これにより、クラウドなしでは実現不可能なワークロードの可搬性を得ることができます。 結果としてマーケティングチームは、ワークロードの移行やベンダーロックインの回避、コストの削減、そして新しいソリューションの革新といった、物理的なインフラストラクチャーでは達成できない柔軟性を得ることができます。

クラウドテクノロジーに固有の利点に加えて、AWSやAzure、Google Cloudなどのクラウドサービスプロバイダーでは大規模なマーケットプレイスを提供しており、マーケティング向けのビッグデータツールの購入やインストール、実行が容易です。 しばしば宣伝で用いられる「ワンクリック」のシンプルさは少し言い過ぎかもしれませんが、こうしたツールの多くはほんの数分で起動して実行できます。

マーケティングにおけるビッグデータを始める

ビッグデータは、私たちのマーケティング活動の目となり耳となります。 ビックデータを利用すると、見込み客や顧客に関する知見を、以前は全く不可能だったレベルで得ることができます。 リアルタイムの顧客のアクションに対応し、顧客の行動をその場で分析し、マーケティング施策に活かすことができます。 ビッグデータは、わずか数年前には実現できなかった方法でマーケティングやセールスを変革しています。

Talend Master Data Managementは、MDMの機能とデータ統合とを組み合わせて、社内外のソースにまたがるデータを1か所からリアルタイムで確認できるようにします。 データレコードに対する一元化された360°ビューを作成して共有することで、いつでもビジネスに関する正しい意思決定を適切なタイミングで行うことが可能になります。 また、明確で定量化可能なビジネス上の利点と具体的な事業の成果に基づく、ビジネスケースを策定することもできます。

今日のマーケティング担当者は、ビッグデータによる非常に効果的なマーケティング活動を開始するためのツールとノウハウを手に入れました。クラウドテクノロジーによって、この活動を迅速かつ比較的簡単に、そしてリーズナブルなコストで行えるようになりました。 課題はありますが、その課題にどのように取り組むかに関する一連の教訓もあります。 この活動をさらに容易にするために、AWSやAzure、Googleではビッグデータ構想を積極的に推進しています。

Talend Data Fabricを使用すると、ほぼすべてのソースからのデータを統合して分析できます。専用の事前構築済みコネクタによって、SalesforceやMarketo、SAP、Netsuiteなどのアプリケーションとの接続が驚くほど簡単になります。 データクオリティとガバナンス機能が組み込まれているため、最良のデータを使用して最も信頼できる知見を生み出すことができます。 マーケティングにおいてビッグデータを活用するのに、今以上に良いタイミングはありません。 Talend Data Fabricを今すぐダウンロードして、カスタマーエクスペリエンスを変革しましょう。

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