データリテラシー:その意味とそれが重要である理由

データリテラシーとは何か

「データリテラシー」という用語は、さまざまな業種の組織がビッグデータを導入する際に注目されるワードになっていますが、単なるトレンド用語ではありません。そのようなトレンドの裏側に目を向けてみると、データリテラシーを高めようとする取り組みがとても理にかなっていることがわかります。

データリテラシーがいかに基本的なものであるかを理解するため、まず「リテラシー」そのものの意味について考えてみましょう。これは「読み書きができる」能力のことです。よって「データリテラシー」とは、「データの言語で読み書きができる」能力のことになります。

Colleagues must learn to speak the same language of dataColleagues must learn to speak the same language of data

「リテラシー」という用語は多くの場合、テーマに即したより深いコンピテンシー(能力・行動特性)を表す際に使われます。たとえば、世界中のパートナーと効果的に仕事をするためには「文化リテラシー」が不可欠です。予算を管理するには「金融リテラシー」が必要となります。同じように、「データリテラシー」とは、データを理解し、データ主導型の意思決定を行う際に必要なスキルセットとして定義できます。

データリテラシーの達成は容易ではないこともありますが、それは、データリテラシーを身につけるために他のコンピテンシーも必要とされるからです。この点について、MITスローンの上級講師であるミロ・カザコフ(Miro Kazakoff)氏は具体的に、「言語リテラシー、数字リテラシー、グラフリテラシーを身につける必要がある」と指摘しています。

データリテラシーの例

データリテラシーを身につけるとは、実際にはどのようなことなのでしょうか?データリテラシーとは、特定の技術に関する知識ではなく、データの使用で必要となる一般的なスキルを身につけることを指します。つまり、人によって見え方が異なる場合があります。

データリテラシーのスキルを用いた日常業務の例としては、以下のようなものがあります。

  • Microsoft ExcelやAirtableなどのツールでスプレッドシートやデータベースを作成する
  • Google AnalyticsなどのWeb解析ツールでウェブトラフィックのレポートを理解してフィルタリングする
  • TableauやLookerなどのBIツールからビジネスインテリジェンスのダッシュボードを読み解く
  • LinkedInの投稿でデータビジュアライゼーションの実行に適したタイプのチャートを選択する
  • 誤解を招くようなグラフやよいところだけを集めたデータを見抜く方法を知る
  • 意思決定者がよりよい意思決定を行ううえで役立つデータ主導型のレポートを作成する
  • 効果的なストーリーテリングでデータを伝える

従業員がこのようなスキルを身に付けていないのであれば、組織はデータリテラシーのスキルギャップに対処する必要があります。幸い、データリテラシーが低い従業員はスキルアップが可能です。

Data literacy is the foundation of a thriving data cultureData literacy is the foundation of a thriving data culture

データリテラシーの向上に有効な取り組みとは、データ文化の構築に重点を置くものです。これにより、組織に所属する全員がその役割に関係なくデータを共通言語として使用できるようになります。

「データリテラシーを身につける」が意味すること

学習者が学ぶ過程において、データリテラシーに関するトレーニングは常に有益なものになります。なぜなら、データリテラシーを身につけることにより、あらゆる分野で成功が促進される可能性があるからです。

普通の人がキャリアを積んでいくうえで、データリテラシーを身につけるということはどういう意味なのでしょうか?

  • 学生:データの言語を学ぶということは、データを記録する方法、データを解釈する方法、そしてデータを他者とやり取りする方法を学ぶことです。データ分析はSTEM(科学、技術、工学、数学)の授業だけのものではありません。コンピューターサイエンス、社会学、健康、地理をはじめ、多くの領域がデータに依存しています。データリテラシーを身につけることで、学生はビッグデータ経済での成功を見つけやすくなるのです。
  • 教育者:データリテラシーを身につけることで、教師はよりよい教育者になることができます。教師が行う評価はすべて、学生の理解度の向上を比較できる機会となります。出席率から学生のモチベーションや行動にまつわるメモに至るまで、学生に関するデータによってその背景がさらに明らかになります。このようなデータはすべて、教師が一人ひとりの成功を理解し、サポートする際に役立ちます。
  • 社会人:データリテラシーを身につけることで、従業員はデータ主導型の意思決定を行い、キャリアアップできます。データの流暢性により、社会人は利用できるデータセットに基づいて状況を評価する能力を身につけることができます。また、データを伝えるスキルがあれば、ミスを減らし、同僚とのコラボレーションを改善することもできます。

データリテラシーが重要である理由

今やデータは書き言葉と同じくらい一般的なものになったことから、「データリテラシー」も「リテラシー」そのものと同じくらい重要となっています。今日において、「リテラシー」(読み書き)は基本的な日常スキルです。しかしながら、世界経済フォーラムによると、ほんの200年前における世界の識字率はわずか12%だったのです。現在、多くの先進国の識字率は99%となっています。

Talendが2022年に発表した「Data Health Barometer(データの健全性バロメーター)」(英語で)によると、99%の企業が「成功にはデータが不可欠であることを認識している」ものの、97%が「データに関する課題に直面している」ことがわかりました。データリテラシーを身につけるということは、よりよい評価とデータ主導型の意思決定ができるようになるということです。ですから、65%の企業が「データリテラシーに関するプログラムを開始した」と回答しているのも不思議ではありません。

データを理解することで、効果的な仕事、新しい機会の発見、リスク低減への扉が開かれます。

データリテラシーにおける3つの重要な要素

データリテラシーの意味をより詳しく理解するには、ガートナーによるデータリテラシーの定義を確認するとよいでしょう。ガートナーのIT用語集によれば、「データリテラシーとは、データを状況に応じて読み、書き、伝える能力のことで、データソースと構成、適用される分析方法と手法を理解し、ユースケースの用途と結果として生じるビジネス価値や成果を説明する能力があること」と言われています。ガートナーが述べているデータリテラシーの定義を踏まえると、データリテラシーには3つの重要な要素があることがわかります。データリテラシーとは、以下を理解することを指しています。

  • データソースとデータ構成 — そのデータはどこから来て、どのように構成されているのか?
  • 分析方法と手法 — これには機械学習アルゴリズムが含まれますが、集合から平均を導き出すような単純なものもあります
  • ユースケースの用途 — データ主導型の知見を用いて価値を創造できるようになることこそが、データの健全性を促進する原則となります

データリテラシーのフレームワーク

データリテラシーのスキルに投資するということは、組織全体の成功に投資することです。データリテラシーのフレームワークは、従業員のスキルアップに向けた骨子となる計画でなければなりません。データリテラシーのスキルが人によって異なるのと同じように、データリテラシーのプロジェクトの全体像も企業によって異なります。

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あなたが所属する組織におけるデータリテラシーとはどのようなものでしょうか?データに関する共通言語を作成するうえで、データについてどのようなツールやスキルセットが必要なのでしょうか?どのようなスキルギャップに対処する必要がありますか?このような質問に答えることで、従業員をスキルアップさせる際に投資すべき場所を把握できます。

データリテラシーのフレームワーク開発」(英語で)に関するガイドを参考に始めてみてください。

データリテラシーに関するトレーニング

2022年に実施した調査によると、 調査対象の65%の企業が「データリテラシーに関するプログラムを実施している」と回答しています。データリテラシーは万能のスキルセットではありませんが、プログラムをサポートする多くのリソースが既に存在しています。

65% of companies have a data literacy program65% of companies have a data literacy program

データリテラシーのトレーニングプログラムを成功させるために必要となる、基本的な手順を紹介します。

  • 評価を活用してスキルギャップを特定する
  • 所属する組織のデータリテラシーのフレームワークを作成する
  • データリテラシーのニーズをサポートするデータ管理ツールを確保する
  • 適切なレベルのアクセス権が設定されているデータリテラシーツールを従業員に提供する
  • オンボーディングを提供する(ソフトウェアベンダーとの連携による提供が理想的)
  • オンラインコースで従業員のデータリテラシースキルを維持する
  • メトリクスの収集とプログラムモジュールの反復を継続する

データリテラシーの構築に関する詳細については、Ultimate Guide to Data Literacy Training (データリテラシートレーニング究極ガイド)(英語で)をご覧ください。

データリテラシーに関するツール

「データリテラシー」の意味は、組織に所属する人ごとに異なる場合があります。しかしながら、データ文化の創造と維持には共通言語の構築が必要になります。データリテラシーに関するツールは、データのサイロ化を解消し、貴重なデータへのアクセスを向上させます。

ビジネスプロフェッショナルの多くは、以下のいずれかのタイプのデータリテラシーツールを日常業務で使用します。

  • データ分析ツールとダッシュボード— ビジネスユーザーは、データの分析や報告を行う際にあらゆる種類のソフトウェアを使用します。データ視覚化ツール、Web分析プラットフォーム、ビジネスインテリジェンスツールや製品インテリジェンスツールがそれに当たります。ユーザーのニーズに適したツールを提供し、ベストプラクティスの習得を支援することで、ソフトウェアに投資した費用を最大限に活用できます。
  • ビジネス用語集やデータ用語集 — すべてのビジネス用語や頭字語の定義を共有します。これにより、組織全体のユーザーが文字通り同じ用語を使ってデータについて話し合えるようになります。このようなツールが存在しない場合は、社内のWikiページのようなシンプルなもので用語集を始めてみてください。最終的には、データ管理ソフトウェアに堅牢な用語集を組み込んだほうがよいでしょう。
  • データ統合ツール— データはあらゆる種類のソースから得られます。ビジネスユーザーは、ビジネスに関する質問に答えて確かな意思決定を行う際に、複数のソースからデータを必要とすることがよくあります。
  • データインベントリー— 組織全体におけるデータの完全かつ記述的な記録のことです。データインベントリーによって、中央のIT部門はデータランドスケープ全体を可視化できます。また、データユーザーは関連するデータセットを検索してアクセスすることもできるようになります。
  • データカタログ — データカタログとは、データインベントリーの一歩先を行くものです。データカタログは、データの所在を示すだけのドキュメントではありません。豊富なメタデータを備えたクロスリファレンスカタログです。データカタログは、ユーザーフレンドリーなインターフェイスを備えている必要があります。完全なデータカタログでは、データガバナンス戦略をサポートするために、完全なデータ来歴と使用状況の追跡も提供されます。

言うまでもありませんが、上記で紹介したツールは、トレーニングなしで使用するのは難しいかもしれません。データリテラシーに関するトレーニングのリソースは、データリテラシーのツールでもあります。

データリテラシーに関するツールにおける3つの主要なタイプの詳細については、「データリテラシーに関するツール:連携の仕組みを理解する」(英語で)をご覧ください。

データリテラシーに関するスキル

データサイエンスに従事する職務でデータフルエンシー(活用能力)を連想するのは自然なことですが、企業で働く従業員は全員、ある程度のデータリテラシーを必要とします。データリテラシーに関するスキルは多岐にわたります。

  • データリテラシーのある人事担当者は、人材分析を活用し、たとえば離職の背後にある理由を特定します
  • データリテラシーのあるマネージャーは、メトリクスを使ってチームの業績を評価し、適正なボーナスを決定します
  • データリテラシーのあるグラフィックデザイナーは、データビジュアライゼーションで複雑なアイディアを効果的に伝えます
  • データリテラシーのあるマーケターは、オーディエンスの絞り込み、キャンペーン成果の評価、投資収益率(ROI)の評価を行います
  • データリテラシーのある営業担当者は、データを使って代表的なお客様の問題を把握し、関連するソリューションを販売します
  • データリテラシーのある製品チームは、代表的なお客様がなぜ、そしてどのように製品を使用するのかを理解します

Data literate employees can discuss data with confidenceData literate employees can discuss data with confidence

当社が提供している記事「Mastering data literacy: developing data literacy skills(データリテラシーを極める:データリテラシーのスキルを身につける)」(英語で)で、この注目ワードの裏にある意味を把握しましょう。

データリテラシーがもたらす効果

データリテラシーは、どのような仕事でも、また日常生活においても不可欠なものです。データリテラシーを構築することで実際に得られるメリットを紹介します。

  • 後手の対応から先手の対応に変わり、データ主導型の計画を立て始めることができる
  • 他者がデータを処理するのを待つのではなく、リアルタイムのデータに基づいて取り組むことができる
  • 職場やニュース、広告などで誤解を招くようなグラフに影響されたり、惑わされたりしなくなる

データリテラシーがもたらすメリットやデメリットの詳細については、データリテラシーがもたらすメリットについて詳しく紹介している記事をご覧ください(英語で)。

教育現場におけるデータリテラシー

ビッグデータ経済の成長に伴い、教育現場においてもデータリテラシーに関するスキルがますます重視されることが予想されます。

しかしその反面、データリテラシーは常に教育の一環として行われてきました。グラフの読み方や、単位を使って測定値を記録する方法などを学ぶ教育活動はすべて、データリテラシーを身につける一助となります。

詳細については、教育現場におけるデータリテラシーに関する記事をご覧ください。(英語で)

ビジネスにおけるデータリテラシー

データリテラシーに関するスキルは、もはやIT部門に限られたものではなくなりました。確かに、最高データ責任者、データサイエンティスト、データアナリストには高度なデータリテラシーが必要です。ですが、現代のビジネスプロフェッショナルは誰もが、データ主導型の意思決定を行う必要があります。

昨今のデータ主導型経済においては、アルゴリズムがあらゆる部門の分析的意志決定を促しているからです。職位に「データ」がない場合でも、データはすべての役割に影響するようになりました。

 Data has become relevant for every business department Data has become relevant for every business department

将来の仕事にデータの言語が不可欠である理由については、ビジネスにおけるデータリテラシーの習得と応用(英語で)に関する記事をご覧ください。

データリテラシーの学習パス

データリテラシーの学習パスは一人ひとり異なるものになります。これは、次の理由によるものです。

  • データリテラシーを身につけるうえで必要なコンピテンシーは業種や組織によって異なる
  • 既存のスキルセットは従業員によって異なる
  • 役割ごとにデータの使い方が異なる

データリテラシーのプロジェクトが個別の学習パスをサポートしていることをご確認ください。

Talendの従業員は、メタデータ管理、データスチュワードシップ、データガバナンスを通じてデータリテラシーを高めるためにTalendの製品を使用しています。データリテラシーに関するプログラムの確立について専門家のアドバイスが必要な場合は、Talendにご相談ください

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